2021年9月1日(水)

私が今年から興味を持っている昭和SM史研究について書こうと思いつつ、今回は歴史学のお話とやや脱線したお話。
歴史研究とは、歴史資料を調べ、その内容が事実であるのか検証する作業なのだけれども、その歴史学の中で私が今回参考にしたい学派があり、その名はなんと「アナール学派」となんともお尻がムズムズするネーミングです。
アナール学派は、当時の政治・経済・文化・哲学・思想など当時の生活文化のすべてを視野におさめた総合的歴史学です。
ということで、私なりのアナール学派の解釈で、Netflixの人気ドラマ『全裸監督』で話題になった黒木香のブームを例にあげると、「SMっぽい飲み好き」が発売された1986年はバブル景気で日本は浮かれだっていて、家庭用ビデオの普及もあり、アダルトビデオのニーズが高まっていた。テレビでは『11PM』とか『トゥナイト』といった深夜番組で、おっぱいが地上波で放送されるのはOKなのに、アダルトビデオや写真集でヘアヌードはNGという今から考えると奇妙な倫理コードの時代でした。
腕を高々とあげ脇毛をアピールする姿は、そんな時代の倫理コードに対するアイロニカルな社会批判だった(と思われる)。
ちなみに、この年は中森明菜の「desire」がヒットし、ドラマ「男女7人夏物語」が放送され、「風の谷のナウシカ」が公開され、CMで「亭主元気で留守がいい」と言う言葉が流行り、ビートたけしがフライデーを襲撃した年です。総理大臣は政界一のゲイとの噂のあった中曽根 康弘。消費税はまだ無い。
学校教育の歴史のテストは、年号と出来事を覚えるのが大半だったけど、出来事のあった時代の空気感がどのようなものだったのか知ることはとても興味深いです。
古い雑誌や書籍ではイマイチ空気感が掴めないので、最近は、やや古めの映画ばかり見ています。SMクラブが出てくる映画でおすすめなのが1994年の『愛の新世界』という作品。(昭和ではなく、すでに平成ですが)
風俗史家の方が、SMクラブがピークだった80年代後半90年代初頭のSMクラブの女王様は大部屋女優と舞台女優ばかりと書いていたけど、まさに主人公はそんな存在。SMを描いたというより当時の風俗の空気感がよく分かる作品でした。
この作品で驚いたのが、Mコースは70分で2万5000円、出張サービスは80分で5万5000円の設定でした。年季の入ったマゾから、30年前の方がSMプレイが高かったと聞いていましたが、やっぱりそうだったんですね。
昭和一桁生まれのレジェンドマゾが、「戦後から卵とSMの値段は変わらない」と言っていたらしいですが、そんな部分も含めて、調べていきたいと思います。
写真は昭和時代のSM雑誌。『妖奇』はSMというより残酷小説誌 昭和24年のもので定価85圓、『奇譚クラブ』は昭和25年で定価70圓、小さなサイズの『奇譚クラブ』は昭和33年で定価200円、『風俗奇譚』は昭和44年で定価500円。
いずれの雑誌もグラビアは巻頭の海外写真とイラスト程度で、ほぼ小説という内容です。
古いSM雑誌を処分したい方のご連絡もお待ちしております。
bySARA女王様